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培養肉市場における規制動向【インフォグラフィック】

Harini Venkataraman, Ph.D., Analyst

Biogenのアルツハイマー病(AD)治療薬に対する最近のFDAの承認は、世界的にメディアにも取り上げられていますが、必ずしもすべて正しい理由で取り上げているわけではありません。患者および介護者にとっては喜ばしい知らせである一方で、この承認は認知症の専門家の間で論争を巻き起こしています。専門家らは、同薬を承認するための臨床エビデンスが不十分であると主張しています。このブログでは、ここで重要な問題を整理し、これがどのような事業機会をもたらすかについて取り上げました。

2016年時点を振り返ると、ほんの一握りのスタートアップで構成されていた培養肉市場ですが、2021年には、技術課題解決に取り組む企業から最終製品の上市へ取り組む企業まで、約80のスタートアップが存在しています。2016年時期に培養肉がアグリフード市場へ参入して以来、総額8億ドルという驚くべき規模の資金がこの分野に投入されており、多くのスタートアップは、パイロットスケールの製造への移行、あるいは商品の販売を行えるまでに成長しました。

しかし、このような進展があったにもかかわらず、各国の規制当局の認可が培養肉市場にとって依然として大きな課題となっています。このブログ記事では、米国、欧州、シンガポール、イスラエル、日本、中国などの世界主要市場における培養肉規制について概説しました。

ラックスリサーチ 培養肉の規制動向(インフォグラフィック)

主要市場での主な規制動向

シンガポールの歴史的な承認に加えて、近年、世界の培養肉市場にて、興味深い進展が複数見られました。

米国では、2019年3月に、米国農務省(USDA)と食品医薬品局(FDA)が、培養肉製品承認のための共同規制枠組みを創設する正式な合意を発表しました。興味深いことに、この共同提案は、家畜と鶏肉のみを対象とし、食品医薬品局の管轄である水産物は除外されています。

EUでは、2018年に公表されたEUの新規食品規制の一環として、培養肉が規制される予定です。このプロセスによりEU全体での承認が可能になりますが、この合理化されたプロセスでも18~24カ月が必要となります。培養肉の規制という点ではEUは保守的な地域と見なされており、欧州系スタートアップの中には、最初の市場参入として他の国に焦点を移す企業もあります。

日本では、シンクタンクのルール形成戦略研究所が、日本市場における培養肉の商品化に関する規制において助言するために細胞農業研究会を立ち上げました。

中国では、培養肉は未だ新しい分野ではあるものの、業界関係者は食料安全保障という課題に対応するためには新しい食料生産方法が重要であると認識しています。2020年6月、中国の高官は、中国の既存の新規食品規制の下での規制の可能性を含め、培養肉に関する規制的枠組みの策定・実施に向けた緊急措置を求めました。

イスラエルは、政府の支援や関与を前提とすると培養肉の規制環境は非常に有利であると考えられています。SuperMeatなどのスタートアップはイスラエルに試験レストランを開店しましたが、2021年6月現在、培養肉製品は規制されていません。

マス向け市場の確立やハイブリッド商品の提供には規制的整備が不可欠

2020年12月にシンガポールが世界で初めて培養肉を認可し、この分野の勢いが増すことになりました。これは培養肉市場の形成へ向けた重要な一歩であるといえますが、世界的に見ると、培養肉に関する規制はまだ明確さが欠けているのが現状です。

シンガポールの規制認可は、他国が規制的枠組みを策定する中で前向きな発展と言えます。ただしシンガポールやイスラエルのような国は、規制環境が良好であるものの市場としては規模が小さく、培養肉が広く普及し市場に浸透するためには不十分です。マス向け市場を開拓するためには、より人口の多い国における規制的障壁の撤廃が不可欠です。

また、スタートアップ企業の一部は培養肉を含んだハイブリッド商品の提供を検討していますが、現時点で、植物性タンパク質と培養肉を原材料とするハイブリッド製品に対する合理化された規制は存在しません。ハイブリッド製品は培養肉を部分的に含んでいるために培養肉のみの商品と同様に規制当局の承認を経る必要がある可能性が高いと考えられます。このような点を踏まえると、培養肉の承認プロセス合理化に向け、この分野にて世界的に規制面での整備が進むと考えられます。

培養肉分野の規制動向をまとめたインフォグラフィックはこちらからダウンロードしていただけます。

 

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