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クローズド・ループ・エンジニアリング向けデジタルツイン:3つの主要ポイントと今後

Akshay Chaudhari, Ph.D., Analyst

製造業・インフラ産業において、デジタルツインの活用が活発化しています。デジタルツインの定義については業界レベルでの合意が得られているわけではないものの、前回のカバレッジにて、ラックスリサーチでは「デザインツイン」と「オペレーションツイン」のユースケースを紹介しました。

製造業ではデザインツインを活用し、企画業務、バーチャルコミッショニング、研修用AR/VRアプリケーション、インフラストラクチャープロジェクトのマネジメントが行われています。同様に、オペレーションツインは、機械の稼働状況のモニタリングや予知保全などに活用されています。   しかしながら、デジタルツインの活用は、プロダクトライフサイクルの特定の段階でのみに焦点が充てられているのが現状です。たとえば、デザインツインは製品設計の初期段階をカバーし、オペレーションツインは生産段階で必要となる多くのプロセスに可視性をもたらします。

今後は、更なるデジタル分野の成熟化や持続可能な製品への要求が高まる中で、製品のライフサイクルを通して運用可能なデジタルツインが必要となります。クローズド・ループ・エンジニアリング向けのデジタルツインは、将来的に設計のアップグレードが必要となる可能性がある物理的資産のデータをリアルタイムに結合することができます。ユースケースのほとんどは設計・製造段階に重点を置いていますが、ライフサイクル全体を通したデジタルツインを導入することで、以下のような明確なメリットが得られます。

  • 設計改善のため、より迅速な新製品開発にリアルタイムのフィードバックを得られることは製品改善につながる
  • プロセスの可視性が向上し、特に、航空宇宙や製薬のように、プロセス中にトレーサビリティが重要な産業において、保守とサービスの管理が容易になる。
  • 製品の持続可能性やサーキュラーエコノミーへの取り組みの必要性が高まっていることを考慮すると、デジタルツインが統合されることにより、使用済み段階におけるより優れた管理が可能となる。

 

今後、クローズド・ループ・エンジニアリングのユースケースでは、デジタルツインの活用の増加が見込まれます。クローズド・ループ・エンジニアリング向けのデジタルツインに取り組む際に、技術開発を手がける企業が考慮すべき重要なポイントは3つあります。

物理ベースモデルとデータドリブンモデルの統合: 

デジタルツインはリアルタイムで物理的資産に接続し、物理ベースモデルとデータベースのモデルを組み合わせる必要があります。物理ベースモデルは、忠実度の高いシミュレーションが必要な設計フェーズで主に使用され、一方、データドリブンモデルはオペレーションツインで採用されます。クローズド・ループ・エンジニアリングには、両者の統合が必要です。しかしながら、それは従来のコンピュータ支援エンジニアリング(CAE)ツールとセンサーデータとの接続性、解析、及び機械学習とAIアルゴリズムを実装する能力をサポートするプラットフォームを必要とします。統合の必要性を認識した大手企業は、従来のデジタルツインのポートフォリオを補完する企業を探しています。例えば、Bentley Systemsは地質モデリング会社Seequent10億ドルで買収した一方で、Hexagon ABはデザインツインの範囲を拡大するためにCADLMを買収しました。    

デザインツインとオペレーションツインを統合できる商品としてデジタルツインを提供するスタートアップは非常に少ないのが現状です。スタートアップ企業は、特定の産業を対象とし、限定的な役割を担っています。例えば石油・ガス業界のAkselos、化学品業界のSeebo、油圧用途のMeveaなどが挙げられます。

大手企業は、オペレーションツインに対応するために、既存のデザインツインのプラットフォームを再構成することができるため優位にあります。したがって、プラットフォーム・プロバイダーのSiemensAltairAnsysPTCHexagon ABBentley Systemsは、クローズド・ループ・エンジニアリング統合に適しています。しかしながら、企業は、データモデルやプラットフォーム間の相互運用性について受け入れられた標準が確立するには、依然として時間がかかるであろうことに留意すべきです。

クラウドVSエッジ VSオンプレミス開発:

複数の組織や地域を巻き込んだ大規模プロジェクトでは、クラウドベースのソリューションを採用する必要があります。Altair Oneのようなクラウドプラットフォームでは、高精度のシミュレーションに高性能なコンピューティングソリューションを提供しています。クラウド導入は、デジタルツインのマネジメント全般において優れていると言えますが、時間的な制約がある用途では最先端のデジタルツインが必要です。

同様に、多くの保守および修理ARアプリケーションは、ARハードウエアのデジタルツインの一部にアクセスしています。しかし、エッジ開発はまだ開発初期段階にあり、一部のオープンソース・プロジェクトでは、デジタルツイン管理の実現可能性を探っています。機密性の高いデータウを利用する組織や、データ共有が競争優位性の喪失につながることを懸念する組織は、オンプレミス開発を選択する可能性があります。オンプレミス開発は、一部のユースケースでより安全で有益かもしれませんが、デジタルツインの導入ではエッジとクラウドを組み合わせたハイブリッドモデルに向かう傾向が見られます。                      

マネジメントと進化するビジネスモデル:

クローズド・ループ・エンジニアリングのプロジェクトは費用がかかり、さまざまな組織から複数のチームを巻き込む可能性があるため、管理と価値抽出において重要な問題が生じます。製品ライフサイクル全体にてバリューチェーン上でデジタルツインが利用されるため、パートナーが得る価値は、当初デジタルツインに投資した目的と同じものではない可能性もあります。さらに、所有権がバリューチェーン全体に移転されるにつれて、責任の所在も変わってきます。商品のライフサイクルを通してデジタルツインを第三者が管理するということもあり得るでしょう。クローズド・ループ・エンジニアリングのデジタルツインの導入により可視性が向上し、また継続的なモニタリングが可能となることから、Machine-as-a-ServiceまたはProduct-as-a-Serviceのような新しいビジネスモデルが可能になります。

#LUXTAKE(ラックスリサーチの見解)                 

デジタルツイン導入プロジェクトに着手したいという誘惑に駆られるかもしれませんが、情報モデルの標準化が不足しており、相互運用性が限られていることは、クローズド・ループ・エンジニアリング向けにデジタルツインを幅広く導入するための大きな障壁となっています。規格開発を加速する必要性を認識し、Industrial Internet ConsortiumPlattform Industrie 4.0Digital Twin ConsortiumIndustrial Digital Twin Associationなどの産業団体は、デジタルツインのオープン規格に取り組んでいます。また、規格の設定に加え、クローズド・ループ・エンジニアリングのためのデジタルツイン開発に携わるパートナーのデジタル分野の成熟度を評価することも重要です。

今後、デジタル技術の成熟化とともにデジタルツインプラットフォームが成熟化するにつれて、デジタルツインの所有と管理に関する課題に取り組む必要があります。クローズド・ループ・エンジニアリング向けデジタルツインは、頻繁な運用変更を行う、あるいは航空機エンジンのように製品ライフサイクルを通してアップグレードを必要とするような高価値で複雑な資産に最も適しているため、まずはそれらの分野での導入が見込まれます。

 

※本ブログ記事は、英文の記事を翻訳したものです。原文記事はこちらからご確認いただけます

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