Select your language: EN JP

ブログ

注目すべき技術やイノベーショントレンドに関するアナリストの見解を提供

イングリディエント・インフォマティクスは食品開発にいかに革命をもたらしうるか

Thomas Hayes, Analyst

最近、ラックスでは、市場で見られる「弱いシグナル(ウィークシグナル)」をどのように取り上げ、その意味合いやそれが示唆する点ついて解説していくか、について社内で議論になりました。アナリストチームは多数のインタビューや市場分析を実施していますが、その市場観測から得た個々の事例から、次第に関心が集まりつつある分野を正確に予測し、それを受けてクライアントへの価値あるリコメンデーションへとつなげていけるか。それはアナリストの大きな関心事となっています。

ところで、ラックスで「イングリディエント・インフォマティクス」(マテリアルズ・インフォマティクスに擬えて)と呼んでいる分野にて、最近、ウィークシグナルが多く見られるようになりつつあります。このイングリディエント・インフォマティクスというコンセプトは、食品成分を材料のように考え、データ、解析、人工知能(AI)を活用することで、コスト削減や、成果を改善しつつ、新しい食品・飲料製品の開発を加速することを指します。ここでは、「イングリディエント・インフォマティクス」というコンセプト自体を生み出したウィークシグナルを概説し、それらが重要なテーマへと型作られつつある点を取り上げ、またそれが消費財メーカーの食品・飲料品の新商品開発をどのように、そしてどのタイミングで変えていくことになるかについて取り上げました。

New call-to-action

ウィークシグナル#1:             

ビッグデータ分析や人工知能(AI)の活用の広まりは、ラックス自身やラックスのクライアントが注目してきましたが、2017年7月にこの分野に(それ以前の5年間の投資総額の75%に相当する)1,750億ドルもの投資が行われたことにラックスチームは注目しました。この分野では同時に多くの過大評価も見られており、クライアント企業、なかでも特に製造業分野の企業は、何十ものアナリティクスプロバイダーからアプローチを受け、新しいA Iアルゴリズムは用途拡大につながり、何百万ドルものオペレーションコスト削減につながる、というような謳い文句で売り込みをされるようになりました(そしてそれは現在も続いています)。

このような過大評価が多く見られる中で有望な企業やソリューションを見分けるために、ラックスリサーチではAI活用において現実的なユースケースを複数取り上げ、製造業が求めているアプリケーション、そしてクライアントが分析プラットフォームにて追求すべきケイパビリティについて取り上げました。

当時、食品・飲料業界では、新しい技術や商品開発のためにAIを駆使したアナリティクスの採用は実際には行われていませんでした。しかしながら、(若干離れてはいるものの)隣接する市場である医薬品と化学品、材料(すなわち、医薬品のディスカバリーとマテリアルインフォマティクスのための人工知能)においては、すでに導入への動きが見られ始めていました。

ウィークシグナル#2:          

ほぼ同時期に、我々はマテリアルズインフォマティクスの採用を目の当たりにしただけでなく、ケーススタディを通して、これらソリューションプロバイダーが技術を活用して実際に価値をもたらしていることがわかりました。ここでは2点例を挙げたいと思います。        

  • Citrine InformaticsFortune 1000のエンジニアリング・デザイン企業が物理的な実験をせずに3カ月足らずで6,000もの材料の機械的性質を判定することを可能にし、2,500万ドル以上の節約につなげることができました。
  • Nutonianは、フォーチュン100のインダストリアル企業のタービンのディスク性能の検証に必要な鍛造部品数の合理化に貢献し、2ヶ月という期間の短縮と50万ドルを超えるコストの削減に貢献しました。

 

このようなケーススタディによって、我々は高まる効率性の要求に応えるために、化学品・材料メーカーが活用する4つの主要なデジタル技術の一つとしてマテリアルズインフォマティクスを取り上げました。 

ウィークシグナル#3:

上記のウィークシグナルと並行して、食品産業にて、デジタル技術を「食品業界向けではない」と考えるか、あるいは正反対にデジタル技術を特に正当な理由もなしに活用しようと試みる、という動きが見られるようになりました。多くの消費材メーカーは、センソリーパネルや経験豊富で高額の給与を受け取る製剤科学者を抱え、製品開発に関する「秘密」のレシピを守り続けるというスタンスを変えずにいたため、開発が失敗に終わることも多々ありました。その例として悪名高いのがSun Chipsの(訳註:生分解性であるもののカシャカシャと音がうるさいと言われた)袋でしょう。あるいは、全く逆に、農業向けブロックチェーンを提供するRipe.ioのような、のちにポテンシャルユーザーにもこき下ろされることとなった必要以上に複雑なソリューションをわざわざ利用している企業もいました。そのような中、ラックスが「正しい」アプローチと考えた食品産業向けデジタルソリューションを開発する企業はほとんどいませんでした。

ラックスリサーチでは、これを、食品メーカーがより生産性を高めるために主要な将来的な課題のシグナルとして認識しました。このような認識から、「イングリディエント・インフォマティクス」というコンセプトが生まれました。そして、2018年のラックス・エグゼクティブ・サミットにて、ラックスリサーチは「You need a new strategy for food innovation(食品業界は新たなイノベーション戦略を必要としている)」と題したプレゼンテーションを通してこのコンセプトを紹介し、消費財メーカーが食のイノベーションに向け、独自にイングリディエント・インフォマティクスを開発するためのロードマップを紹介しました。

当時、我々が発見できた唯一の例はNotCoIBMのChef Watsonでした。しかし、それ以降、我々はまさにイングリディエント・インフォマティクスのコンセプトを実証するような企業による動きが著しく活発化し、ラックスリサーチでも多くの技術開発企業をプロファイリングしました。以下の図では、この分野における当時の動向を、「ブランドオーナー」(自社または共同開発製品を作るためにAIベースのデータ分析を使用する企業)と「サービスプロバイダー」(消費材メーカーにソフトウェアサービスとしてAIベースのデータ分析を提供する企業)の2つのカテゴリーにまとめました。

イングレディエント・インフォマティクス分野の動き

Lux Research Ingredient Informatics                       

これらの出来事は、前述したウィーぅシグナルを観察することによってもたらされた「イングリディエント・インフォマティクス」のコンセプトが、実際にどのようにして生まれたかを明らかにしています。これらの出来事と相まって、新しい食品・飲料製品開発を刷新しようとする強いニーズがあることを考えると、イングリディエント・インフォマティクスの勢いは継続し、最終的には伝統的なアプローチに取って代わるものと予想されます。

しかし、今後一層重要となる問題は、まだ2つ残っています。すなわち、各企業は何をすべきか、そして、どのようにしてイングリディエント・インフォマティクスを活用するか、という問題です。

イングリディエント・インフォマティクスは新しい食品・飲料品を迅速に開発するための手段であるため、2017年にマテリアルインフォマティクスに関して我々が行ったのと同じリコメンデーションを提供したいと思います。それは、「今すぐ投資すべき」、というものです。当時述べたように、デジタル主導の技術は、物理的な製品イノベーションよりも早いスピードで進化します。将来的にこれらツールへの特権的アクセスを確保するためには、今、投資を行う必要があります。           

2点目の問題はより難しい問題ですが、2017年にラックスが提供した、アナリティクスプロバイダの選択のためのフレームワークを使用することをお勧めします。        少なくとも「サービスプロバイダー」を見ると、これら企業間の差異は最小限にとどまっています。したがって、我々のフレームワークを用いて、まず、最も望ましいプラットフォーム機能を特定すると良いでしょう。次に、必要とする機能のリストを含めたRFPを潜在的なベンダーに送信し、これらベンダーのソリューションを文書化して評価することができます。最後に、POCを実施し、長期的なROIをモニタリングすべきです。

 

※本ブログ記事は、英文の記事を翻訳したものです。原文記事はこちらからご確認いただけます