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注目すべき技術やイノベーショントレンドに関するアナリストの見解を提供

水産養殖におけるイノベーション動向と主要企業

Laura Krishfield, Research Associate

養殖生産は、世界の食料安全保障を支える重要な分野です。 しかし、この業界は従来のやり方を維持し続けており、透明性も低く、養殖場は環境悪化の一因となっています。 これらの問題を受け、昨今、政府期間やHatchAqua-Sparkなどの技術系ファンドからこの分野へのインフラ開発や技術イノベーションへの支持が行われています。

この分野にて技術開発を手がける企業の大多数は、養殖生産の効率や持続可能性を最大化するための養殖ファーム管理とセンシングソリューションの開発に焦点を合わせています。 現状では、水産養殖イノベーション動向は細分化されており、この分野で最も大きなインパクトを与えるようなポテンシャルの高い事業機会を特定することは容易ではありません。

そこで、ラックスリサーチは持続可能な水産養殖を支える技術分野として5つの技術グループ(養殖システム、環境管理、飼料管理、健康管理、サプライチェーン管理)を特定しました。 モニタリングソリューションは多くの形態がありますが(ロボット工学、カメラ、リモートセンシング、ポイントオブユースセンシングなど)、持続可能なオペレーションを定量化し、価値のある結果として提示できるようにするためには重要な分野です。

このブログでは、水産養殖イノベーションの新たなトレンドや主要な開発者を特定・分析し、この分野にどのように参加することが可能かについてラックスリサーチの見解を提供します。

水産養殖におけるイノベーション動向

Key Players in Aquaculture Innovation

水産養殖分野のイノベーションの特定の地域への集中は見られない

養殖生産はアジア太平洋地域(APAC)に集中しています。 APACはほぼ90%を占め、中国、インド、インドネシア、ベトナム、バングラデシュなどが主要な生産国です。 他にも、ノルウェー、チリ、エジプトも集中的な生産努力を支援しています。 しかし、各国政府が業界の環境と財政の持続可能性に対してますます手厚い支援を提供するようになり、イノベーションへの取り組みは世界中に広がっています。

米国では、上院は、連邦海域でのオフショア水産養殖産業の発展を支援するために、アメリカ水産養殖の質と理解の向上(AQUAA)法を再検討しました。 ノルウェーとベトナムとの最近の協力協定に見られるように、国際協力はまた、養殖の専門知識を拡大してこのセクターを後押ししています。

中小企業によるイノベーションへの取り組みが中心

中小企業がこの分野のイノベーションの取り組みの大部分を担っていますが、研究機関や大学も技術開発をサポートしています。 水産養殖業は1990年から2018年にかけて527%以上成長しましたが、比較的若い産業のままです。成長は世界的に一貫しておらず、高価値の魚がより生産されやすく、消費者の食生活に水産物が占める割合が高い地域に焦点が当てられています。

技術の中でも、環境管理が最も一般的に開発されており、飼料管理がそれに続来ます。飼料は、 適切に管理されていない場合、水質に悪影響を与える可能性があるため、これら分野は関係性が高いことが見受けられます。

サプライチェーン管理がこの分野の最新のイノベーション機会 

トレーサビリティは、養殖生産の優先事項として、種の同一性と品質を確保し、養殖ファームでのオペレーション状況に関する情報を提供するための新しいソリューションを中心に、技術開発が進んでいます。SSP(世界の魚介市場での持続可能性を促進するエクアドルのエビ養殖会社のコンソーシアム)とIBM Food Trustとの間のパートナーシップに見られるように、技術開発企業と養殖生産者の間のコラボレーションがサプライチェーン管理ツールの導入を促進する可能性があります。

 

水産養殖を支える5つの技術分野における主要企業

Lux Research Aquaculture Innovation Market Map

1. システムデザイン

養殖システムの開発者は、サケ科の魚など、価格が高く需要の多い種に引き続きターゲットを絞っていますが、技術開発を手がける企業は多様な種の魚介への対応を模索し始めています。 これには、モジュール式の再循環水産養殖システム(RAS)(Alpha Aquaなど)、共培養アプローチ(1つのシステムで大型藻類と甲殻類を成長させるなど)、大型藻類や甲殻類などの非魚種(Catalina Sea Ranchなど)が含まれます。

オフショア生産をサポートするシステムは、より深い海域に下げることができるネットペンを再開発しています。 これらの囲いは、酸素化が進んでおり、通常は浅いエリア(Innovaseaなど)で見られる寄生虫の影響を受けにくいか、これらの領域から閉鎖されたシステムに水が汲み上げられています。 アイルランドの企業、Impact-9は、エラストマーおよび合成繊維材料を使用して海流に耐える柔軟な封じ込めソリューションで際立っています。

2. 環境管理

特に水質のモニタリングは、養殖管理の主要な要素であり、現在、イノベーション活動の大部分がこの分野に集中しています。 水質は、病気の予防と生産の改善に影響します。スタートアップ企業は、水の温度、pH、溶存酸素、塩分、アンモニア、二酸化炭素、粒子状物質のレベルの変化を検出できるIoTシステムとセンサーを開発しています。 主な差別化要因は、早期警告などの重要な価値提案に対応する信頼性の高いセンサーネットワークを用意することです。

ドイツのスタートアップ企業であるHydroNeoは、最近、Thai Unionのベンチャーファンドから資金提供を受け、エビ養殖業者が最大7つの異なるセンサーをリモート制御し、水質分析を自動化できるシステムを構築しました。 環境管理に関するその他の最近のイノベーションとしては、衛星によるリモートセンシング(Dynaspaceなど)やドローンの使用(Seasmart)が含まれます。これらは、水観測用の人工知能に関する研究開発が進歩していることを考えると有望です。

3. 飼料管理

飼料は養殖生産において多くのコストを占めます。過剰な給餌は利益率を奪い、水質を維持するためにも悪影響を与えます。 摂食習慣のモニタリングは非常に困難な場合があり、また種によって異なることがあります。 そのため、飼料モニタリングプラットフォームは、マシンビジョンとセンサーを統合し(主にビデオフィードとして)、魚介の行動や成長の予測を行うことにターゲットを絞っている傾向があります。 この分野では、データとトレーニングアルゴリズムの取得に向けて興味深い動きも見られます。 たとえば、CageEyeの親会社であるBluegroveは最近、Sealabを買収し、魚の個体数全体のシステムの行動分析と個別のモニタリングを組み合わせました。

4. 健康管理

病気の診断におけるイノベーションとしては、センサーと画像パターン認識ソフトウェアを活用した生理状態のリアルタイムでのモニタリングや健康評価を伴う混合技術プラットフォームが含まれます。 ノルウェーのベルゲンを拠点とするManolinは、マシンビジョンハードウェアとデータ分析ソフトウェアを開発し、サーモンの感染性サーモン貧血(ISA)と膵臓疾患(PD)のリスクを予測しています。 同社のプラットフォームは、ノルウェー全土の病気の発生状況のリアルタイムでのレポート、海洋予測、海洋センサー、ボートの交通量、海洋活動に関するデータを統合しており、予測精度レベルは93%を超えていると同社は主張しています。健康管理分野でその他に重要である分野としては、寄生虫の存在を特定することです。 たとえば、Aquabyteのプラットフォームはウオジラミを検出することができます。

5. サプライチェーン管理

消費者の間でトレーサビリティの向上への関心が高まっていることを受け、養殖サプライチェーン内での取引を容易にするオムニチャネルプラットフォームやマーケットプレイスの開発が行われています。AquaconnectXpertSeaなどのプレーヤーは、養殖生産者が魚介のデジタルID(つまり、体重分布、場所の場所、魚の年齢など)を提供し、ファーム内のインテグリティを向上させることができるよう、データ収集ツールやソフトウェアシステムを提供しています。

IBM Food TrustAteaなどの企業は、所有権取引をサポートするためにブロックチェーンベースやレジャーベースのプラットフォームを提供しています。 これらのソリューションのスケーラビリティは、養殖生産者の利用が限定的であるためROIの実証が限られています。 米国は、NOAA Fisheriesを通じて、魚介のサプライチェーンの透明性確保に向け独自のデジタルソリューション開発に取り組んでいることには注目すべきです。

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#LUXTAKE(ラックスリサーチの見解)

水産養殖分野のイノベーションは、産業が拡大するにつれて今後も成長し続けるでしょう。 イノベーションは、環境の持続可能性と魚介の健康状態のモニタリング、食料源としての水産物に対する消費者の関心を高めるためのトレーサビリティと透明性の向上によって推進されます。 デジタルトランスフォーメーションは業界にとらわれず、ほとんど従来型のやり方を継続している水産養殖にも多くの投資が行われていることを考えると、オペレーション効率を改善し、環境への影響を削減することにつながるようなモニタリング技術は有望であると言えるでしょう。

より具体的には、システムイノベーションにおいて、飼料の管理はコスト面でも環境への影響においても重要な原動力であることは変わらないでしょう。 コンピュータービジョンは、魚介の行動に関するインサイトを提供することができ、養殖に必要な資源やコスト、また病気による魚の死亡率を低減することにつながります。

水産養殖分野におけるイノベーションに関心がある企業は、データを実用的なインサイトに変えることが可能なマルチパラメータセンサーや通信システムを備えたパートナー企業を特定する必要があります。システムイノベーションに関しては、RASは成長しているもののリスクの高い養殖生産オプションであり続けます。ただし、この養殖モデルの長期的な可能性は理解しておくべきでしょう。また、近海および沖合の養殖は今後も発展していくでしょう。

 

※本ブログ記事は、英文の記事を翻訳したものです。原文記事はこちらからご確認いただけます

 

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