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持続可能な材料とソリューション:経路依存性をどこまで懸念すべきか?

Michael Holman, Ph.D., VP & Group Director for Manufacturing and Materials & Kristin Marshall, Analyst

コロンビアのConceptos PlásticosやケニアのGjenge Makersのような企業は、新興市場におけるプラスチック廃棄物汚染問題に対して賢いソリューションを提供しています。廃棄されたプラスチックはレンガやタイルなどの建築材料に変換します。 このエレガントなアプローチは、プラスチック廃棄物に対処し、他のエネルギー集約型の材料を置き換えるため、1つの石で数羽の鳥を獲るアプローチと言えるでしょう。このように、それらは持続可能な材料に関心のある企業が真似をすべき理想的なソリューションです。

・・・と言えるでしょうか? これらのソリューションやサーキュラーではありません。実際、砂やその他の材料をプラスチックに混ぜてレンガやタイルを製造し、それらが再利用されない場合は、さらに深刻なプラスチック廃棄物の問題へとつながる可能性があります。マイクロプラスチックの問題はいうまでもありません。 さらに、大量のプラスチックの生産と廃棄に依存するシステムを定着させ、使い捨てプラスチックの禁止を回避するインセンティブとして作用したり、ケミカルリサイクリングなど、プラスチック廃棄物対策として将来的に出現しうるより持続可能なソリューションと競合してしまう可能性もあります

ここでは、これらのアイデアの背後にある起業家の努力を軽蔑しているわけではありません。なぜなら、彼らのアプローチが現状を大きく改善していることは明らかであるからです。 しかし、欠点として言えば、経路依存性(path dependency)についての懸念を引き起こします。より良いものの不完全なソリューションを導入することは、将来的により効果的なソリューションの採用を妨げるリスクがあるのでしょうか?


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そのようなケースは実際多く存在します。廃棄物の熱分解からの石油を燃料に使用するというループ・ザ・ループ・アプローチは現時点では良いソリューションかもしれませんが、電化によって燃料需要が減少すると行き止まりにぶつかる可能性があります。電気自動車向けバッテリーの急速充電インフラへの現在の投資は、将来より意味のあるバッテリースワップスキームの資金を圧倒する可能性があります(またはその逆となる場合もあります)。 この経路依存性という課題は、持続可能性の意思決定にどのように影響しうるのでしょうか?

一般的には、「完璧」を「善」の敵としてはなりません。理論上の将来の理想と比較して眠れない夜を過ごすよりも、今日改善をもたらすソリューションを追求することは理にかなっています。 世界的な課題に対応するために必要な変化の規模や、より持続可能なソリューションの導入が本質的に遅い現状を鑑みると、まだ置き換えられていない古い慣習が多く存在していることを示唆しており、誰かより良いアプローチを発明した場合、それを使わない手はありません。ただし、そうであったとしても、全てのステークホルダーは経路依存性という問題を検討することには価値があります。

  • 規制当局は、特定のソリューションを促進するのではなく、柔軟性を念頭に置いて政策や規制を設計する必要があります。 税金や価格設定スキームなどを、次世代のイノベーションが活用できるようにインセンティブを設計するには、地域間および長期的にルールの一貫性が依然として重要ですが、特定の技術を優先的に対象とするような補助金よりも賢明です。
  • 材料開発者はポートフォリオ思考を採用し、外部の企業からのディスラプションを待つ受け身の姿勢ではなく、自社で自社ポートフォリオに対しディスラプションをもたらすことを恐れてはなりません。 新技術は今後も出現し続けます。1つの大きな賭けによる栄光に甘んじるのではなく、改善されたソリューションを着実に提供し続けることで、企業は時代の先を行くことができます。
  • 製品を提供する企業は、さまざまな指標のバランスを取りながらも、システムトランジションという視点を持つ必要があります。製品の持続可能性の改善を試みる消費財、食品、自動車、建設、およびその他産業の企業は、再利用された内容物、排出量の削減、水の使用量など、それが何であったとしても、1つの指標に固執すべきではありません。その代わりに、持続可能性にさまざまな影響をもたらしうるリソースを比較検討した上で新しいオプションを吟味し評価できるような賢いアプローチを取るべきです。
  • 起業家投資家は、さまざまなオプションを効果的に見出すために、エコシステムを構築しコラボレーションの可能性を模索する必要があります。 もちろん、どの企業も製品への影響や使用法をよく理解し、製品の改善を続ける必要がありますが、ハッカソン、コンテスト、インキュベーター、コンソーシアムなどに参加することで、あらゆる角度から自社製品を確実に把握できます。 NextGen CupBeyond the Bagのようなチャレンジは、この分野でのアイデアや出資先模索にも適しています。

 

もちろん、今回の議論は前提として、ソリューションが実際に全体的に優れていることを前提としています。1つの指標が良く、他の指標では悪化が見られるようなものであれば、意図しない深刻な結果に苦しむことになる可能性があります。 企業は、改善が実際にプラスであることを確認するためには、新しいソリューションを包括的に評価する必要があります。 しかし、それが行われたとしても、より持続可能な経済に向けた進展は、必ずしも直線的または単純なものになるとは限りません。 企業は常に新しいオプションを検討し、経路依存性にとらわれることを回避することで、(プラスチックの)レンガをひとつずつ積み上げ、より優れたシステムの構築を支援することができます。

 

※本ブログ記事は、英文の記事を翻訳したものです。原文記事はこちらからご確認いただけます

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