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注目すべき技術やイノベーショントレンドに関するアナリストの見解を提供

3Dプリンター市場で「カネの集まるところへ滑り込む」には

Michael Holman, Ph.D., Vice President, Research

Clayton Christensenは、自身の著名な記事、『Skate To Where The Money Will Be』にて、IBMが部品から販売、流通まで、スタック全体をコントロールし業界全体の利益の大部分を取り込んでいた1970年代の垂直統合モデルから、コンピューター業界が水平統合モデルへと移行した経緯について説明しています。

この変化により、インテルによるマイクロプロセッサー、あるいはマイクロソフトによるオペレーティングシステムなど、コンピューターのバリューチェーンにおいて最も困難なレイヤーにて優位に立つことができた企業が、業界全体の価値の大半を獲得するようになりました。コンピューターのみならず、業界構造の変化は、多くの業界において利益プールがどこに見出されるか特定することの重要性を高めることにつながりました。

この記事では、3Dプリンター産業の現在を取り上げ、同業界が垂直統合モデルあるいは水平統合モデルのどちらが最も収益性の高いモデルであるかについて考えたいと思います。またビジネスモデルの優位を決定づけるのは顧客ニーズに応えることが難しいか否かであるという点について言及しています。

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「製品が十分に良くない場合・・・・垂直統合企業であることが成功に不可欠」とクリステンセンは指摘していますが、ラックスリサーチは3Dプリンター市場に関しても同じことが言えると考えています。3Dプリンターは製造技術としては比較的未熟であるため、顧客によるコストと性能面での要求を3Dプリンターで満たすには、材料からプリンター、デザイン、ワークフローソフトウェアに至るまで、すべての構成要素をシームレスに連携することを保証可能な、完全に統合されたエコシステムが必要です。

3Dプリンター業界関係者もこの市場ダイナミックを十分理解しています。Stratasysのような企業は、以前から独自の材料やソフトを持ち、また部品製造も行っています。MarkforgedCarbonのような新規参入企業もこの教訓を受け、独自の統合モデルを構築しています。

3Dプリンターに事業機会を見い出した大手材料メーカーでさえ、このアプローチを再現しようとしてきました。BASFによるSculpteoの買収Arconicの3Dプリンターでの印刷済み部品提供という戦略などがその例として挙げられます。

しかし、コンピューター技術の改良を受け、デルやコンパックのような新しいOEMがモジュール式部品からコンピューターを構築できる構造を生み出したのと同様に、向こう10年間で3Dプリンターも成熟化し、ユーザーが3Dプリンターの「スタック」の異なるレイヤーにおいて異なるサプライヤーを選択できるような時代が来ることになるでしょう。

コンピューター市場の変化は、性能に対する最大の技術的課題が残っているレイヤー(インテルによるマイクロプロセッサー)や、アクセスしやすさと使いやすさのメリットが最も重要であったレイヤー(マイクロソフトのOS)に利益が集中しました。

3Dプリンターにとって今後最も利益が集中するレイヤーとはどの部分でしょうか?

今後、利益が最も集中すると思われるレイヤーは、3Dプリンターソフトウェアとサービスです。

材料やプリンター技術は、メタル3Dプリンターを中心に改善の余地が十分ありますが、ソフトウェアの進歩が技術の最先端を押し進める可能性が最も高いです。

Desktop MetalAutodeskのようなジェネラティブデザイン、Siemensなどによる製造ワークフロー最適化やプロセス自動化ソフトウェアなど、どちらのデザインソフトウェアも、製造業における3Dプリンターの競争力を高めるのに役立ちます。

一方、業界知識の豊富なサービスプロバイダーは、新しい産業における3Dプリンター部品の設計や導入をサポートすることができ、伝統的な製造業者に対しすぐ使えるような製造ラインを提供することさえできるでしょう。Formlabsは、Form Cellというコンセプトにてターンキーソリューションを提供する方向に動いており、これら企業は3Dプリンター技術活用を成功に導くことによって利益を得ることが可能です。

現時点では、垂直統合型モデルが最善であり、今後数年はこのことに大きな変化があるとは考えにくいため、3Dプリンターによる事業展開を行なっている企業は特に焦る必要はありません。ただし、長期的な視野に立って現在3Dプリンター戦略を模索している企業は、「カネが集まるところに向け滑り込む」ために利益がどこに向かっているかを十分見極め、業界が成熟するにつれ、最も価値を獲得可能な分野にて、強力で明確に差別化されたケイパビリティを構築すべきです。

 

※本ブログ記事は、英文の記事を翻訳したものです。原文記事はこちらからご確認いただけます